Archive for July, 2008


2008年07月31日

ダンボールの食べ方

こんなに食料危機が叫ばれているのに片方ではいまだに大食い競争をやっている。これは、建前で平和を訴えながら自らホロコーストの場面を作り出している地球社会の現状にも似ている。こんなことをやっている動物は人間だけだ。

大食い競争はそのうちに淘汰されるとしても、今のふつうの生活からは、食べ物の有り難味というものはなかなかわからない。

せめても食べ物が有限であることを感じたのは、中学生のときに友達二人と川に行って小魚をたった一匹釣り、それを宿の人に焼いてもらったときである。誘ってくれた友人は一匹も釣れず、皿の上に魚がない。その悔しそうな顔といったらなかった。

ほんとうに、人って行動を通じてでないと実感を持てない。

ただし本を読むことも行動である。その中から切迫感が伝わってくることもある。たとえば、次の三冊は食べ物も含めて、文明社会での「不自由な生活」をみごとに描写している。

○ホームレス中学生、田村裕
○失踪日記、吾妻ひでお
○獄中記、ジェフリー・アーチャー

[amtap book:isbn=4847017374]

[amtap book:isbn=4872575334]

[amtap book:isbn=4042938019]


2008年07月30日

アシモフの文明の法則

僕らの地球全体としての文明がこれからどのような道をたどっていくか。これは最近とみに誰もが関心を持っていることだが、展望というよりもむしろ不安感のほうが先行しつつあるようだ。

けれども、地球というものにとらわれず仮説としての地球外文明の歴史について考えてみれば、その不安感を拭い去るヒントが見つかるかもしれない。アシモフの”ASIMOV’S NEW GUIDE TO SCIENCE”の次の部分を読むと、そういう気がしてくる。

There may be many civilizations not yet at the point of being able to send or receive messages, and many civilizations that are destroyed, and only one or two that have just reached the point of message sending and are about to destory themselves but have not yet done so.

何度もかみ締めながら読むとじわりと効いてくる文である。関心をお持ちのかたは是非辞書を片手にトライしていただきたい。
出典:ASIMOV’S NEW GUIDE TO SCIENCE, ISAAC ASIMOV, PENGUIN BOOKS

[amtap book:isbn=0140172130]


2008年07月29日

フローとストック

この20年間はフローばかりの世界で仕事をしてきたような気がする。フローに乗らないと仕事はなかなか来ないがストックができあがらないのもつまらない。だいたい地球だってストックが始まってから地が固まったのだろう。

さて、子供がこの夏休みに勉強のストックをこしらえようとしている。こちらも負けてはいられない。

そこで、次の条件でペーパーバックを一冊選んで丸のみすることにした。

○プレーンな気持ちのいい英語で書かれている
○技術とふつうの分野の両方に通用する英語が使われている
○過去と未来の動向を踏まえている
○レトリックが豊富である

でやはり「being digital」に決まった。すでに手持ちの二冊がぼろぼろになっているので、新たに二冊買ってどこへでも持ち歩きひたすら読む。辞書はいっさい引かない。

どんな効果が出たかを一ヶ月くらい後にリンガマで報告しようと思う。

[amtap book:isbn=0340649305]


小説家であり詩人でもある池澤夏樹はコピーが嫌いらしく、コピー調の文章が多すぎるとさかんに吼えている。詩が大特集されている今回の「PLAYBOY」でも次のように言っている。

詩は文学である。コピーは産業である。だから詩には作者の名が必ずついてまわるが、コピーの作者の名は業界の外へは出ない。商品に嘘があっても作者は責任を取らない。だからコピーを書く時は嘘かもしれないと思いながら書いてもいいが、詩は真実と信じて書く。

わたしは詩を書けないので、詩のことはよくわからない。けれどもコピーはすこしだけ書いたことがある。そのときの気持ちを思い出すと、嘘かもしれないと思いながら書いたことはほとんどない。同時に、真実も追い求めていなかったが。

次のような気持ちでコピーを書いている人もいる。

コピーって、企業の代わりになって書こうとしたらしんどいです。
ターゲットの気持ちを代表なんかして書こうとしてもしんどいです。
誰かの代わりにコピーを書くのはしんどいから、
誰の代わりにもならず、自分の気持ちでコピーにしていけたらいいな、
という野望を持ち始めてもう何年もたちます。

これは『コピー年鑑2004』で賞をとった小島令子がコメントとして述べた言葉なのだそうだ。池澤夏樹に是非これを読ませたい。

出典:「詩の習慣」、池澤夏樹、PLAYBOY 2008年9月号
名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方、鈴木康之、日経ビジネス文庫

[amtap book:isbn=4532194490]


だいぶ前にディーゼルエンジンを載せためずらしいスカイライン2000GTに乗った。ディーラーが貸してくれたのである。

一番気になったエンジンの音は意外に静かだった。

そのわけはエンジンルームにあった。メーカーが必死になって当時の「最先端」の遮音対策を施していることがわかり、薄茶色の紙を使った梱包という表現がぴったりだったかもしれない。

肝心の「走り」だが、ふつうのガソリンバージョンと比べてそれほど大きな差を感じなかった。もちろん素人だから公道しか使えなかったのだが、GTらしさも少しはあったのである。

今でもディーゼルエンジンはすてたものではないと思っている。もちろん環境対策が最大の課題となるだろうが。

徳大寺有恒が、月刊PLAYBOY 2008年9月号の中で、ディーゼルエンジンについてこう述べている。

半年後には、ことによると日本マーケットもディーゼルになびくかも知れない。なんせガソリンはレギュラーで180円もするのだ。ではディーゼルは安いかというとやがて安くなくなるだろう。しかし、ガソリンと同じ価格になってしまっても1Lの走行距離は相当違う。1Lあたり10 kmはいくだろう。ことによるもっといくかもしれない。

この予測が当たるかどうかは別として、ディーゼルに少しは着目してみたい。あのメルセデスだって昔から乗用車でもディーゼルエンジンに力を入れている。

将来のメインストリームエンジンに移行するまでの間、ディーゼルエンジンがもっと登場すれば、安全性を犠牲にせずに気に入った車に乗り続けることができるような気がする。


「である」といふ言ひ方を確立したのは紅葉ださうです。

丸谷才一の『ゴシップ的日本語論』はほんとうにいろいろなことを教えてくれる。

さて、角川必携国語辞典で「である」を引いてみると、次のように書いてあった。

断定の助動詞「だ」の改まった言い方。

ということは僕たちは、日常、断定の助動詞でも改まった言い方とそうではない言い方をブレンドしていることになる。単調なリズムに変化をもたせるということから、語尾に「だ」と「である」を使っているというのが実情のようだ。

尾崎紅葉はどのように使い分けているのだろうか。

出典:『ゴシップ的日本語論』、丸谷才一、文春文庫

[amtap book:isbn=4167138190]


ああ、そうそう、この物語は6章から始まっている。

そうなのである。アシモフの『神々自身』は6章から始まっている。とある小説家が言っている「本は必ずしも最初から読む必要はない」とはすこし違った意味合いだが。

本文の冒頭に「6」と書かれていて、献辞の部分をまだ読んでいない場合は、おやっと不思議に思うことだろう。

中に出てくる「融交」という概念から、ついいろいろなことを思い出した。自分が失恋を重ねていたときのことも含めてである。セカンドライフのようでもある。

これは、物理学者の卵のような人から勧められた本である。彼はこういう艶かしさに心を引かれたのだろうか。もう結婚したかなあ。

出典:『神々自身』、アイザック・アシモフ、ハヤカワ文庫

[amtap book:isbn=4150106657]


2008年07月24日

DNAとエイズ

ぜんぶアルファベット文字でも、意味がよく伝わってくる名称というものがあるようだ。最近ではSNSなどもその一つといえないだろうか。バランスがよくて、すぐに覚えられる。

車でいうとBMWだろう。バイエルン何とか…というフルネームを知らなくても問題はない。名前自体に動きがある。

長尾真の”「わかる」とは何か”になるほどなと思えることが書いてあった。

科学技術の世界だけでなく、学問一般において新しい概念に名前をつけるということは、ひじょうに大切なことである。しかも、うまく名前をつけることが、その概念の流布に大きな影響をおよぼす。たとえば、DNAやエイズは、それぞれデオキシリボ核酸、後天性免疫不全症候群という正式名称しか与えられていなかったら、これらの概念はこれほど浸透しなかっただろうといわれている。

DNAはほんとうに初めて聞いたときに頭にすっと入った記憶がある。エイズもたしかに概念の流布に役立ったと思う。ただその深刻さを伝えにくくしている一面があるような気もする。

ところで、今考えてみたいと思っているのは、「いい本だね」と思わせる短い標語である。必ずぴったりのものがあるはずなのである。

出典:「わかる」とは何か、長尾真、岩波新書

[amtap book:isbn=4004307139]


はやいもので「SEA BREEZE」を使い始めて20年が過ぎた。最初の頃はドラッグストアなどに行っても置いてあるとはかぎらず何軒か探したりした。「シーブリーズありますか」と聞いても店の人がきょとんとしていることもあったくらいだ。

そのSEA BREEZEの真っ白なボトルをながめていて、ふと次の英文のことが気になった。

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*Sticky skin to refresh it

これはなんだか不思議な文ではないだろうか。何か頭の中がぐるぐるする。ずっとこう書いてあったのだろうか。

でもせっかく長年愛用している製品なのだから小さなことは気にせずにいこう。


プロは上手いところと下手なところの差がないんだよ。

常盤新平の『遠いアメリカ』の「黄色のサマー・ドレス」の中で、翻訳を勉強中の重吉に向かって「師匠」の遠山さんが言うアドバイス。

コンスタントに力を発揮することの大切さと難しさを思い出さずにはいられない。やっぱり勝負の決め手は集中力かな。

ここで、ふとあることを思い出した。それはボクサーが放つパンチの速度のことである。高校のときに物理の教師から教わったのだが、アマとちがってプロのパンチは初速と最終速度にほとんど差がないのだそうだ。どこで当たってもダメージがあるということだろうか。

出典:『遠いアメリカ』、常盤新平、講談社文庫

[amtap book:isbn=4061845063]